LOGISTICS COLUMN

物流コラム

2024.12.13

(1) EC事業者「出荷」におけるボトルネック

利便性や選択肢の多さを背景に、インターネット通販は日本の消費者にとって欠かせない存在になっており、参入する企業も増えてきています。そんなECの業務の中でボトルネックとなりやすいのが「出荷」の部分になり、さまざまな要因があります。

注文量の変動

セール時や季節イベントで注文が急増すると、通常の出荷体制では対応しきれないため、大胆な施策が打てないという店舗さんも多いのではないでしょうか。

突発的な注文量の増加により在庫管理や出荷業務が滞ることによって、配送をお待たせしたり、ミスが発生したりという懸念もあります。

人手不足と作業効率の低下

出荷作業の多くは手作業が絡むため、人員不足やスキルのばらつきによって効率が低下しやすくなってしまいます。パート・アルバイト等の短時間労働者が担当する場合も多く、家庭や学業の事情で欠勤が多くなるタイミングもあります。

物流の複雑化

複数の販売チャネル(自社サイト、Amazon、楽天など)を運営していると、異なる出荷基準や配送業者への対応が必要になります。
顧客ごとに異なる配送方法や特別なリクエストへの対応が必要となり、出荷業務がどんどん複雑化し、時間がかかるようになります。

スペースと設備の制約

自社倉庫が狭い場合、在庫の保管や出荷準備スペースが不足し、効率的な作業が難しくなります。
出荷量の増加に設備が追いつかないケースも多く、ロットを少な目にすることによりスケールメリットが得られない、欠品期間が増えるという難点もあります。

事業の拡大のためボトルネックを解消するには

出荷におけるボトルネック解消のため、「発送代行業者」に出荷そのものをアウトソーシングするという方法があり、それをきっかけに事業を拡大できたという事例も多数あります。
発送代行業者は、倉庫に商品を保管し、運営事業者に変わってエンドユーザーに向けて商品を出荷します。

(2) 委託できる業務の範囲

発送代行業者には、以下の業務を委託することが可能です。

在庫管理

発送代行業者は、商品の保管や在庫の管理を行います。これにより、EC業者は倉庫のスペースを確保したり、在庫を管理する手間を省くことができます。リアルタイムでの在庫状況の把握が可能なシステムを提供している業者もあり、在庫管理の精度が向上します。

商品梱包

商品の梱包も発送代行業者が担当します。EC業者のブランドに合わせた梱包(ロゴ入り資材の製作、エコ梱包、ギフトラッピングなど)にも対応しており、顧客に届いた時に商品がどのように見えるか配慮したサービスを提供しています。

発送手配

注文を受けた後、発送代行業者は送状や納品書を発行、商品の梱包を完了し、配送業者に引き渡します。EC業者が指定した期日までに商品を顧客に届けます。

返品処理

返品や交換の手続きも代行業者に委託できます。商品が返品された際の検品や再出荷、在庫更新などの対応を一括で管理してもらうことが可能です。

カスタマイズサービス

一部の発送代行業者では、商品に特別なラッピングを施したり、オリジナルのメッセージカードを添えるといったサービスにも対応しています。これにより、顧客へのブランド体験を向上させることができます。

(3) 出荷代行のメリット

出荷代行を導入することにより、EC業者には次のようなメリットがあります。

業務効率化と時間の節約

発送業務をアウトソーシングすることで、スタッフは発送業務から解放され、マーケティング等店舗側にしかできない業務に集中できます。特に、小売業務の繁忙期や各ECモールのキャンペーン時には、出荷量が急増しますが、発送代行業者が対応することで、業務がスムーズに進行します。

コスト削減

倉庫の維持費や人件費、梱包資材費用など、発送にかかるコストが「固定費」から実際に出荷した分だけ費用が発生する「変動費」に代わります。それにより物流費の適正化が図れます。

配送スピードと顧客満足度向上

発送代行業者は、さまざまな出荷のノウハウを持っている事から、多くの場合注文から発送までのスピードが向上します。配送が迅速であれば、顧客の満足度も高く、リピート率の向上にもつながります。

繁忙期の対応力

季節的な需要の変動に対応できる柔軟性も大きなメリットです。発送代行業者は、急増する注文数にも対応できる体制を整えているため、EC業者は安心して繁忙期を乗り切ることができます。

発送業務を気にして、知らず知らずに及び腰のプロモーションになることもなく、大胆に大型施策を打ち立てることもできます。

(4) 出荷代行のデメリット

出荷代行にはメリットだけでなく、注意すべきデメリットもあります。

サービス品質やトラブル対応のリスク

発送代行業者を利用することで、サービスの品質やトラブル対応がEC業者のコントロール外になります。例えば、梱包ミスや配送の遅延、商品の破損などが発生した場合、迅速に対応してもらえるかどうかが重要な問題となります。

依存度の高さ

発送代行業者に依存しすぎると、業者選びや契約に失敗した際に、業務が滞ったり、顧客満足度が低下するリスクがあります。代行業者との信頼関係が不可欠であり、定期的なチェックと評価が求められます。

(5) 出荷代行の費用相場

発送代行業者の料金相場を理解することは、どの業者を選ぶかを決める上で、重要な要素です。以下では、代表的な費用項目を挙げていきます。

基本料金とオプション料金

発送代行業者によって、基本料金やオプション料金が異なります。基本料金には、注文受付や商品の在庫管理、梱包、発送手配が含まれ、オプション料金はラッピングや特別な配送方法(例えば日時指定便や保険付き配送など)が追加される場合に発生します。費用を計算する際には、これらの料金の内訳をよく確認することが重要です。

倉庫保管費用

倉庫保管費用は、保管する商品のサイズやスペースによって変動します。大都市圏の倉庫は坪単価が高く、保管費用も高額になりがちですが。地方倉庫を活用している代行業者に委託した場合、コストを削減できます。

配送費用

配送費用は、配送先の地域や配送方法(宅配便、メール便など)によって異なります。取り扱う荷量によっての特約料金が適用できる場合もあります。

また、配送に関しては費用のみでなくリードタイムも重要視する必要があります。

(6) 代行業者の選び方

出荷代行業者を選定する際は、価格だけでなく、サービスの質や業務の安定性、柔軟性などを総合的に判断することが重要です。以下では、代行業者を選ぶ際のポイントを解説します。

料金体系の透明性

代行業者を選ぶ際は、料金体系の明確さが最も重要です。基本料金や追加費用が明確でない業者に依頼すると、予想以上のコストがかかる場合があります。各サービスの料金が明確に提示された業者を選ぶ事により、コスト管理がしやすくなります。

サービスエリアと配送能力

サービスエリアや配送スピードも選定のポイントです。

特にスピード重視のEC業者にとっては、EC人口の割合が多い関東を中心として、いかに広範囲で翌日配送ができるかが大きなアドバンテージになります。

柔軟性とカスタマイズ対応

商品の発送に関しては、業種や商品の特性によって柔軟な対応が求められることがあります。例えば、ギフトラッピングや特別な梱包方法、日時指定配送などが求められる場合です。各種モールに対応できる柔軟なサービスが受けられれば、エンドユーザーのニーズをくみ取りやすくなります。

システム連携

EC業者が扱うデータの量や種類は膨大であり、システムの連携が不可欠です。WMSのAPI連携ができる倉庫を選べば、ECサイトとのリアルタイムでの在庫情報や発送ステータスを把握することができます。

実績と信頼性

選定する業者の取引企業や、過去にどのような規模感の案件に対応してきたか、その実績や信頼性を確認することは非常に重要です。すでに導入されている同業者からの口コミ等は特にチェックが必要です。

結論

出荷代行は、EC業者の負担を軽減し、事業の成長をサポートするための強力なツールであり、積極的な事業展開にはなくてはならない存在と言えます。

それだけに自社の商品やサービスにあった業者を慎重に選ぶ必要性があります。

このコラムではEC事業者様のお役立ち情報を発信してまいります。

「こんなことが知りたい」などのリクエストがありましたら、是非お寄せください。

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